Report

専門家を招いた研究会・分科会やオープンシンポジウム、その他の「Innovation Nippon」の諸活動において発出された提言書やとりまとめなどをご紹介します。リンクの表示されている各書類は自由にダウンロード頂けます。

研究会報告書

報告書「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査」
2024/4/16
[年間報告書]
報告書全文
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 概要版
(PDF)

インターネットとSNSの普及により、一人ひとりが自由に情報を取得・発信することが可能となり、人類総メディア時代となりました。この変化は多くの利点をもたらすと同時に新たな問題も引き起こしており、偽・誤情報が広く拡散される問題は、特に社会全体に深刻な影響を与えています。偽・誤情報は、政治、経済、公衆衛生など、社会のあらゆる分野で混乱を引き起こし、個人の判断や行動を誤らせる可能性があります。また、偽・誤情報は社会的な対立を深刻化させ、コミュニティの結束を弱めることもあります。

その対抗手段の1つとして、ファクトチェックと教育啓発の重要性が世界中で高まっています。ファクトチェックは、公平かつ客観的に情報の正確性を評価することで、偽・誤情報の拡散を防ぎ、公的議論の質を高めることを目指しています。また、教育啓発の促進は、人々の偽・誤情報に対する免疫力を高めることができます。しかし、ファクトチェックがどの程度効果的であるか、どのような形態であれば人々により届きやすいのか、人々はどのような情報源を信頼しているのか、人々は信頼できる情報にアクセスするためにどのような行動をしているのか、教育啓発にどのような効果があるのか、ファクトチェッカー養成に必要なスキル・手段は何かなど、本分野における実態の調査、及び、エビデンスベースの適切な改善策の提案はほとんどなされていないのが現状です。

このような背景から、本調査研究では、偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発といったテーマで実証研究を行いました。本調査研究によって、情報の信頼性と情報環境の質を向上させるための適切な施策や、ファクトチェッカー養成講座開発、教育啓発プログラムの開発などに重要な知見をエビデンスベースで提供し、本調査から導かれる提言をまとめました。

【本調査から導かれた提言】
1.わが国においても偽・誤情報は大きな悪影響をもたらしており、対策の更なる推進が不可欠
2.適切な情報検証の啓発と、情報検証行動を後押しするような機能の開発・実装
3.感情を揺さぶられるような情報の危険性の啓発と、そのような情報に気づかせる機能の開発・実装
4.直接の会話による偽・誤情報の拡散にも注意するように啓発
5.インターネット上の情報や偽・誤情報に関する啓発(メディア情報リテラシー教育)を、インターネット上の動画などの需要のある方法で推進
6.わが国におけるファクトチェッカー養成講座の作成とファクトチェッカーの育成が必要
7.ファクトチェックは効果が高いため、ファクトチェックを支援する技術の開発推進、ファクトチェック結果を優先的に表示する工夫等が求められる
8.災害、医療・健康、政治についてのファクトチェックを優先的に行う
9.マスメディアによるファクトチェックへの参加が期待され、それを促すインセンティブ設計も必要
10.生成AIが偽・誤情報環境に与える影響を詳細に調査したうえで、適切な対策方法を検討・開発・実装していく

【調査研究プロジェクトメンバー】
‒ 山口 真一(国際大学GLOCOM 准教授・主幹研究員)
‒ 渡辺 智暁(国際大学GLOCOM 教授・研究部長・主幹研究員)
‒ 逢坂裕紀子(国際大学GLOCOM 研究員)
‒ 谷原吏(立命館大学産業社会学部准教授 / 国際大学GLOCOM客員研究員)
‒ 大島英隆(国際大学GLOCOM客員研究員)
‒ 井上絵理(国際大学GLOCOM主任研究員)
‒ 田邊新之助(国際大学GLOCOMリサーチアシスタント)

【謝辞】
本調査研究は、Google.orgより日本ファクトチェックセンター(JFC)を通じて提供された資金のサポートを受けて実施された。ここに、本研究を支援していただいたすべての関係者に深く感謝の意を表する。

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